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漢方とは

動物や植物、菌類、貝殻、鉱物 などに存在する分泌物、抽出物、細胞の中身などから 特に薬効が認められたものを生薬といいますが、 天然のものなので 乾燥させたり、破砕したり、 微末にしたり、エキス剤にして 用いられています。

そもそも生薬は、古代から疾病や怪我のときに用いられ 歴史を積み重ねながら 利かないものは利用されなくなり 確かな効能のあったものだけが 現代まで伝承されてきたものです。

しかし、日本と諸外国では生薬の名前が異なっているものもあり、 個人輸入で入手した生薬での健康被害も発生しています。

たとえば、モクツウ(消炎性利尿剤)という生薬は、 アケビ科のつる性の茎の部分を用いるのですが、 中国などでモクツウといえば、 地上部の茎に肝臓障害を引き起こすアルストロキア酸を含む キダチウマノスズクサを使ったものがモクツウとして流通しているので 細心の注意が必要です。


「漢方薬とその副作用について」

生薬をいくつか組み合わせたものを漢方薬と呼び、 一つ一つの生薬が持っている効能とは直接関連性がなく、 数種類(多いものではもっと)合わさり全体になることで 処方自体が一つの有効成分として独立したものです。

漢方薬は、何百種もある漢方薬のなかから患者ごとに処方されるため、 その漢方薬が証(患者の体質や症状だけでなく 家庭環境なども含めたあらゆる面での現状を診断材料にする) に完全に合致すれば効果は期待できるものの  そぐわないものが処方されてしまった場合には、 効果が得られないばかりでなく、副作用を招きやすくなります。

というのも、漢方薬には、カンゾウ、マオウ、ダイオウという生薬が 配合されることが多いのですが、 現代の漢方薬の一般的な副作用も、主にこの3つの生薬によって 引き起こされているからです。

また一時期、風邪のひき始めには葛根湯などという言葉が流行しましたが、 体力があまりない人や高齢の方には向いていません。 このように 体質などによっては向かない人もいるのが漢方薬なので 症状が風邪でも 人によって違う漢方薬が処方される可能性は十分にあります。

ですから、風邪や胃もたれ、などといった病名だけで漢方薬を選ばず また 病気の初期と末期でも出てくる症状が異なってくることもふまえて 証に合致した漢方薬を服用するようにしましょう。


「家康も愛した生薬」

薬に強い関心を持ち、調合も趣味だった人物で 有名な方は なんといっても徳川家康でしょう。 家康は、生涯の半分近く暮らした駿河の国に薬草園を作り、 (その薬草は100種以上あったといわれています) また、国内からだけでなく諸外国からも質の良い生薬を集めて 自ら調合し、病気の予防や治療に役立てていました。

そんな生薬好きの家康の逸話として有名なのは、 孫にあたる3代将軍家光が3歳のころ大病を患い 医者でも手の施しようがなくなり生命の危機に瀕していたときに 鉱物性生薬を配合した紫雪を服用させ命を救ったという話、 また、出陣のときでも 薬配合書や薬用具を持参し、 生薬配合薬を笠の裏に隠し持っていたという話などがあります。 健康に人一倍気を使い、身分が高くなっても常に粗食を心がけ、 刀や盾、鷹狩、乗馬、川泳ぎなどの運動も日課にしていました。 江戸時代の平均寿命が40歳前後だったにもかかわらず、 75歳まで長生きできたのは 養生に努める生活を送っていた からではないかと思われます。 ちなみに、家康の遺品の中から薬壺が見つかりましたが、 その中は なんと58種類もの動物生薬、鉱物・植物生薬が配合された 丸薬(練り合わせて丸くまとめたもの)のもとが入っていたそうです。

参考文献 はあと通信2010年5月号 北里大学小曽戸洋博士

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